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ep79 サプライズ

Auteur: 根上真気
last update Dernière mise à jour: 2025-06-13 07:01:06
【15】

放課後の教室は、内外でざわついていた。原因はシルヴィアンナでもリザレリスでもない。それは一日の授業が終了し、皆が帰り始めた頃に起こった。

「一年生のみんな、授業おつかれさま」

教室の入口に、金髪の美男子が現れたのだ。突然の第一王子の出現に、誰もが驚きを隠せない。すでに第三王子のフレデリックは教室を後にしていたので、ここに来る理由が見当たらない。そこへ我こそはと躍り出ていったのはシルヴィアンナだった。

「まあ!フェリックスさま!こんなところまで何の御用でございますの?」

いつもの毒っ気がすっかり抜け、完全な淑女モードになっていた。恋する女の顔つきで目を輝かせ、両手を握り合わせて王子を見つめるシルヴィアンナ。まるでロミオを待っていたジュリエットのようだ。シェイクスピアさながらのロマンス劇でも演じるつもりだろうか。

「やあ、シャミナード嬢。元気そうだね」王子の笑顔がシルヴィアンナに向けられた。

相変わらず素敵、と叫ぶのを我慢しつつ、シルヴィアンナは膝を折って挨拶(カーテシー)をする。それから花のような微笑みを浮かべた。

「シルヴィアンナは今、フェリックスさまにお会いして、幸福の極みでございます」

「それは良かった」

「でも、もっとわたくしを幸せにしていただけません?」

シルヴィアンナはあくまで上品に、可愛らしくねだるような上目使いをする。

「一体なにかな?」とフェリックスに訊かれ、シルヴィアンナはそっと自分の胸に手を当てた。

「そろそろわたくしのこと、シルヴィアとお呼びくださいませんか?」

「大貴族のシャミナード家の御令嬢であられる君を、そんなに簡単に気安く呼ぶことは控えられるよ」

「そ、そんな、だってあなたは王子殿下であられるのに!」

「おっと、それは学校ではやめてと言ったよね?」

フェリックスは、シーッと口元で人差し指を立てた。シルヴィアンナは悲しそうに「はい......」と頷き、しおらしく引き下がった。その光景をエミルとともに教室のうしろから眺めていたリザレリスは唖然としていた。

「なんなんだあれ?」

「いえ、それよりも......」

エミルが気にしたのはシルヴィアンナではなかった。そしてそれは、予想通りに起こる。フェリックスの視線が、シルヴィアンナから本来の目的となる人物へと移った。

「やあリザ、調子はどうだい?」

フェリックスは、普通の男子学生のような
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